大阪割烹体験2017ウィンター

大阪割烹体験2017ウィンター
食い倒れの街、大阪がはぐくんだ割烹
コラム 割烹を知り、愉しむ

コラム割烹を知り、愉しむ

大阪割烹体験実行委員会 委員長
フードコラムニスト
雑誌「あまから手帖」編集顧問
門上武司

『カウンター割烹の楽しみ方』

洋服をオーダーする。最近は、フルーオーダーでなくパターンオーダーというシステムが登場し、リーズナブルな価格で自分の体型に合ったスーツやジャケットを作ることができる。完成の良否は、最初の会話に因るところが大きい。こちらの好みをどこまで伝えることが出来るか。オーダーのことを「ビスポーク」と呼ぶ。つまりお客がテーラーと話しながら(Bespoke)、洋服を作ってゆくことに由来するのだ。

この話しながらというのが、まさに割烹を楽しむのと同じ意味なのである。まずはカウンターを挟んで、言葉を交わす。そこでは、こちらがどのような料理を食べたいか、伝えるだけでいい。そこから料理人は料理を組み立てる。ひょっとすると質問が飛んでくるかもしれない。会話が始まるわけだ。料理人はこちら側の情報を可能な限り、入手したいと思う。それに応えることができれば、シメシメである。そんな時に、カウンターの隣の席から言葉が投げかけることも起こるのが、大阪の割烹。「その魚やったら、こんな調理のほうがエエんとちゃうか」「前に、これ食べてけど、ほんまにおいしかったわ」などの会話が生まれれば、割烹の醍醐味を満喫ということになる。

割烹とは、料理を食べるという行為を通して言葉をくみかわす。いわば、非日常と思われる空間に、どれだけ日常を持ち込むことができるか。一言発するだけで、割烹の愉しみは広がってくるのである。

浪速魚菜の会・大阪料理会
代表理事
笹井良隆

『割烹の歴史と魅力』

割烹は本来の意味よりも、スタイルとして理解されている面白い言葉だ。だがその言葉の成り立ちを知れば、さらに割烹の魅力を発見することができるだろう。

割烹は、文字通りに解釈すれば生魚などを割(切)き、野菜などを烹(煮)ることにある。つまり割烹とは、料理そのものの義であった。

しかし料理も時代と共に2つの道に分かれることになる。ひとつは家庭料理であり、もうひとつが料理屋料理。古くは料理全般を意味してきた割烹という言葉が、料理屋のスタイルとしても定着し始めてきたのは、おそらくは大正時代ではなかろうか。その発祥を大阪にいくつも見つけることができる。

それまで料理屋といえば、料亭にみるように座敷にあがり食事をするものであった。しかし、もっと気軽に靴を履いたままで、腰掛けて食べられる店が次々と登場した。さらには露店の寿司屋やおでん屋のように小さなカウンター越し に「旨い、安い、早い」の三拍子をうたった割烹店も登場することになる。こうしたスタイルから生まれたのが現在のカウンター割烹だとも云えよう。

ただし、これはスタイルだけのことであり、料理そして味が簡易であるということでは断じてない。むしろその逆。料理本来の楽しみ方である、食べたいものを、その場で食べたいように料理してもらい食べることができる店なのである。

客と料理人が差し向かえ。誤魔化しはきかない。まさに料理の醍醐味ここに極まれりというのが 割烹店なのである。旨いもんには金を惜しまない。料理というものの値打ちを形にしたものが大阪の割烹だともいえよう。

大阪割烹体験 2017 ウィンターは、2017年2月26日(日)をもちまして終了しました。
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