大阪割烹

コラム 割烹を知り、愉しむ

門上武司

大阪割烹体験実行委員会 委員長

フードコラムニスト

雑誌「あまから手帖」編集顧問

門上武司

割烹ということ。

音楽は配信、そして音楽はイヤフォンで聴くことがほとんどという状況が生まれています。
しかし、ライブ会場に足を運ぶ人たちは増えているのです。つまり、現場の空気感の交流こそ、一般消費者が求めていることなのでしょう。私が関わる「あまから手帖」でもネット会員は飛躍的に伸びています。ネットで様々な情報を入手する時代だということを理解されているのです。そこで会員に「何を欲するか?」というアンケートを実施すると、最も多い回答が「食事会」なのです。ネット会員ですら「食事会」というライブな感覚を求めています。

そのような観点から「食」を捉えてゆくと「割烹」という世界が、もっとも現在(いま)の状況に合致した食事のスタイルとも言えるのでしょう。

かつて「割烹」は食材を前にして、料理人とお客が調理法を相談しながら料理を決めてゆくという定義がありました。だが、時代の変化とともに「割烹」の定義も変わりつつあります。「割烹」を名乗る料理店でも「おまかせ」料理が多くなってきたのも事実です。オープンキッチンで、料理人が調理をする姿が見える。その臨場感、つまりライブ感覚を味わえる料理店は「割烹」に値するということになってきました。
この「大阪割烹体験」を通じて、割烹の臨場感を味わい、その楽しみを感じていただきたいと切に願うばかりです。その思いを叶えてくれる割烹店が、皆様の来店を心待ちにしているのです。

笹井良隆

浪速魚菜の会・大阪料理会

代表理事

笹井良隆

料理屋

「割烹の歴史と魅力」

割烹は本来の意味よりも、スタイルとして理解されている面白い言葉だ。だがその言葉の成り立ちを知れば、さらに割烹の魅力を発見することができるだろう。割烹は、文字通りに解釈すれば生魚などを割(切)き、野菜などを烹(煮)ることにある。つまり割烹とは、料理そのものの義であった。

しかし料理も時代と共に2つの道に分かれることになる。ひとつは家庭料理であり、もうひとつが料理屋料理。古くは料理全般を意味してきた割烹という言葉が、料理屋のスタイルとしても定着し始めてきたのは、おそらくは大正時代ではなかろうか。その発祥を大阪にいくつも見つけることができる。

それまで料理屋といえば、料亭にみるように座敷にあがり食事をするものであった。しかし、もっと気軽に靴を履いたままで、腰掛けて食べられる店が次々と登場した。さらには露店の寿司屋やおでん屋のように小さなカウンター越し に「旨い、安い、早い」の三拍子をうたった割烹店も登場することになる。こうしたスタイルから生まれたのが現在のカウンター割烹だとも云えよう。

ただし、これはスタイルだけのことであり、料理そして味が簡易であるということでは断じてない。むしろその逆。料理本来の楽しみ方である、食べたいものを、その場で食べたいように料理してもらい食べることができる店なのである。

客と料理人が差し向かえ。誤魔化しはきかない。まさに料理の醍醐味ここに極まれりというのが 割烹店なのである。旨いもんには金を惜しまない。料理というものの値打ちを形にしたものが大阪の割烹だともいえよう。